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【R18】Querer【創作BL】

第24章 初デート





映画館に来たのは何年振りだろう。

被害者遺族の怒り嫌悪悲しみ悔しさといった
さまざまな感情が入り乱れ、
想像以上にグロテスクな内容だった。

役者の演技が迫力あり過ぎてリアル感が増す。
それに反比例して画面を通じて惹きつける魅力もある。
しかし途中で気分を害した人もいて
何人かは席を立ち上がっていた。





(本当にこの人、
現役高校生なんだろうか……)





あの過激な感情はどこから発揮されるのだろう。
あの怨恨はどこからやってくるのだろう。

先生の話によれば、
彼はまだ現役高校3年生の18歳。
それに映画の主人公も偶然にも同い年。
それだけで主演を抜擢されたとは考えにくい。
子役時代から積み重ねてきたものなのだろうか。



物語りは休日のある日、父と二人で釣りに遊びに行った帰り。荒らされた部屋。泡をだして真っ青になった母と、わずかに息をしていた姉。

加害者は…3人の青少年。

かろうじて姉の命は助かった。しかし、レイプされた惨めな記憶や体の痕跡、追い打ちをかけたように成長した弟をみて、あの日の恐怖を呼び起こし自殺。主人公は悟られたくない思いから作り笑みで感情を殺し、平穏に慣れようとした。

寄り添い続けてくれた彼女。深く触れようとした瞬間、あの血生臭い光景を思い出し、込み上げた感情。父はストレスで倒れ病院へ搬送され、偶発的に見つかった余命を宣告された。

幸せだった四人の家族。

しかし青少年達によって何もかも狂わされた。主人公は死刑判決の出ている首謀者以外の加害者2人が少年院を満了したという情報を得て、気になるニュース記事を見つけてしまう。メディアによる表現の問題だったが、それは少年をひどく傷つけた。



恨むは加害者のはずだった。

確認のため加害者に接触を図ろうとした矢先、のんきに暮らしている加害者家族を目にする。崩壊した器は留めることなく濁流を渦巻く。

矛先は加害者だけに止まらなくなった。家に押し入って致命傷ではない場所や床を何度も叩き、呪いを込めた言葉を発する。

トントントン…

思い出せ
謝れ
忘れるな
恨め憎め

ドンドンドン…

思い出せ
許さない

ドンドンドン…

思い出せ
なにをした?

ドンドンドン…

思い出せ
なにをされた?

恐怖体験を心理に刻むようにハンマーを振り翳し、報復がはじまった。


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