第23章 先生
コーヒーと混ざったような甘い香り。
清潔に着こなした
スリーピースのスーツ。
トレードマークともいえる黒ぶち眼鏡をかけ、
腕時計のほかに
その他装飾品はない。
男女ともに生徒に人気があり、
やや強めに左目が内側に向いている
個性的な顔立ち。
髪型はパーマをかけており
優しくオシャレな雰囲気が漂う。
「…ってなことを永遠に悩んでてさ。
兄弟もいなくて
言えそうな友達もいないと
肩身が狭いよなぁ」
「まあ…そうですよね」
先生は同級生の立ち話しを聞いて
解決したようだが、
たまたま出くわすのも稀なこと。
同級生にゲイがいたと知って…
果たして自分も
伝えることができるのだろうか、
と思ってしまう。
「角はどうなんだ?
女の子とキス…したことあるのかい?」
「それは、」
小学校4年生の時。
帰り道に急に告られたことがあった。
あんまり喋ったことのない女子。
クラス内でも明るくて
人気な方だったから
罰ゲームでもされたんじゃないかと
思わず辺りを見回してしまった。
俺は女子に興味はない。
告白をあっさり断ると、
1週間も経たないでまた告白してきた。
あれじゃあ伝わらなかったのだろうか。