第23章 先生
赤いマフラーに
トレンチコートを羽織った装い。
中学時代にお世話になった塾の教師。
「はし、づめ…先生…」
「え?先生?」
「あぁやっぱり、角なんだな。
少し見ないうちに成長したなぁ」
懐かしそうに微笑み
近付いてくる橋爪先生。
(…うそ、だろ…)
先生とは、
もう二度と会わないと思っていた。
もっと喜ぶべきなのに…喜べない。
「久しぶりだな、角。
そちらの背の高い彼は…
おトモダチかな?」
「どうもはじめまして。
長瀬由真と言います。
普通の友達じゃなくて
会社の同僚兼、唯一無二の友達って
ところですかね!」
「唯一無二のトモダチかぁ…。
良かったな、角。
仲良くしてくれる友達ができて
先生は安心したよ」
先生は知ってる。
俺がゲイだって。
相談に乗ってくれた
優しい先生だったけれど
最後の日を思い出して、
視線を交えることができなかった。