第23章 先生
長瀬にそんな気持ちを抱いてしまったが
あっという間に
1年近くが経ってしまう。
相変わらず長瀬の距離は近かったが
俺が望む距離じゃなかった。
匂いも体温も
男友達と居るような生殺しの射程距離。
アルコールが苦手と知って以来、
長瀬から
合コンに誘われることはなくなった。
けれど二人きりの遊びに誘われたり、
今まで経験したことのない
友達って奴を
長瀬は教えてくれる。
「…さむっ…」
「今日は冷えるよなぁ…。
あそこにカフェあるから少し暖とろうぜ」
「…うん。そうだな」
クリスマスまでのカウントダウンが始まり、
外ではイルミネーションが輝く季節。
白い息を吐き出しながら
カフェに向かって歩いて行くと…
「…角…?」
「…っえ?」
聞き覚えのある
やや高みで色気のある声。
その声がした方向に振り向くと
今も変わらぬ
黒ぶち眼鏡をかけた
先生が立っていたのだった。