第3章 高熱
「少しでいい。
胃に入れておけ」
「…ぅ、…」
気だるそうな返事を返し、
うどんの湯気にあてられている。
「仕方ない。ほら…食え」
箸でうどんの麺を一本を掴み、
口元まで運んでいく。
「あ、つっ…」
「悪い、熱かったか…。
レンゲで冷ましてからの方がいいな」
息子相手なら未だしも、
ふーふー冷ましてやることはできない。
レンゲで一本の麺を冷まし、
口元に運んでいくと
ゆっくりと咀嚼していく。
「…ぅん…」
「ん?
…泣くほど美味いのか…?」
「……ぅん…」
急にぽろぽろと涙を流し始めた角。
男なら簡単に泣くなと言いたいところだが、
今のこいつは相当弱ってる。
「もう一本、食うか…?」
「…はぃ…」
角が、
前の会社で何をされたのか聞きたい。
そんな思惑を抱えながら、
優しく声を掛け、
口元までうどんを運んでやるのであった。