第19章 戻りたい
人間余裕がなくなると
視野が狭くなるっていうから
ユウの父親を完全に責めることはできない。
それにしっかり反省しているようだし、
俺が責めたところで
ユウをまた苦しませてしまうかもしれない。
「…酒飲める歳になったら
またお話ししましょ。
ユウもこれから大人になるんです。
仕事に子育てばかりじゃ
また何やってるんだろうって
自暴自棄になるかもしれませんから」
「はは。君は大人だな~」
「日々大人の人たちに揉まれてますからね。
まだ未成年だから障害は少ないですけど、
俺は一般人の
綺麗な嫁さんと結婚するのが夢なんです」
「おお、そうなのか。
てっきり綺麗な女優さんを貰うのかと。
少なくとも芸能人同士結婚すると
あれやこれやと噂が立ちやすいからね」
それも多少あるが
一番はやはり…
癒しを求めたいのが本音。
「今は色々な仕事を引き受けていますが、
バイト感覚ではじめたことなので
大学在学中に芸能活動を
辞めようと考えているんです。
まだ先のことなので
誰にも言ってないんですけど」
「ん?それは学業に専念するためかい?」
「一般企業に就いて
スーツを着て働きたいんです。
昔からサラリーマンっていう
大人たちが格好良いなって思っていて。
最初はどのスーツに袖通そうとか
悩み中なんですよ」
「さすがモデルだね。
祐次郎からは仕事を始めるまで
まったく私服を持っていなくて
お兄さんから借りてるって聞いたけど…」
「ユウの奴。そんな余計なことまで…」
ブログなどで似たことを発信しているが、
事実を知っているユウから伝わると
なんだか別物に感じてしまうのであった。