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【R18】Querer【創作BL】

第19章 戻りたい





暫くすると
だんだんユウの呼吸状態が落ち着き、
タケに頼んで買って来てもらった
ペットボトルの蓋を開ける。





「水飲むか?」


「…うん…ありがと…」





ユウは喋れるくらいに正しい呼吸に戻り、
滲んだ汗と涙を拭きとってやる。





「あ。次のチャイム、鳴っちゃったね。
…ごめん」


「謝るのはこっちの台詞だ。
窒息させようとしてごめん」


「う、ううん…。
助けようとしてくれたんだよね。
…嬉し、かったよ…。
どうもありがとう」


「礼を言われることなんて…」





浅はかな知識で処置なんてやるべきじゃない。

けれど助けたいと思ったら
身体が勝手に動いてしまうものだ。



人工呼吸やAEDの使い方とか
出血とか骨折した時の応急処置とか
小中学生の時に講習会があって
学んだことはあったが、

過換気症候群と出会ったのは
これが初めて。




「でも治まってくれて良かった。
最後の授業だし保健室で休んでいくか?」


「ううん。授業に遅れたくないから
今から戻るよ」


「真面目だな…。
いつからそんな真面目ちゃんになったんだ?」





もう大丈夫と顔色が戻った
ユウのなめらかで柔らかい髪を
くしゃっと撫でてやる。





「えへ。アキは仕事忙しくて
サボり癖覚えちゃった?」


「んなわけないだろ。
貴重な内申点
下げるわけには行かねえっての」










…触れたユウの唇も柔らかかった。



そんな焦げ目がつきそうな気持ちを抑え、
ぐしゃぐしゃっとユウの髪を撫でまくって



この感情を、

気付きたくない不純物のように

掻き回したのであった。


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