第3章 高熱
背中に触れてみると熱い。
汗をかいて着替えていないのか
Tシャツがかなり湿っている。
(俺もマスクをしてきて正解だった。
…重症だな。これは…)
意識は虚ろで唸っている。
俺に気付いたのか、
薄っすらと潤んだ目を開いた。
「俺だ。
勝手に部屋の中に上がらせてもらうぞ」
「……主…任…」
「自分で歩けるか?」
「…は、い…」
179㎝の俺よりも背丈はない。
だが、大の大人を抱えるのは容易ではなく、
俺が決してひ弱なわけでもない。
肩を貸して廊下を進み、
1DKの部屋の中の匂いを
無意識に嗅いでいた。