第19章 戻りたい

レッスンでOKばかりじゃなかったが
レベルの高い人たちと切磋琢磨し、

これが俳優デビューになるかもしれない
深夜ドラマの
オーディションの話しを聞かされた。

しかも地上波。





「結構クセの強い役だけど…
牛垣くん、どうする？」





ドラマは
10月からはじまり、

しかも数秒しか映らない役ではなく
準レギュラーとしての配役。





「是非やらしてください！」





深夜ドラマの内容を聞いたら
変な人に好かれやすい
女性の恋愛模様を描いたお話し。

その中で候補に挙がったのが、
主演女優をストーカーしている高校生役。



表向きは運動神経抜群、
成績も優秀なイケメンで
クラスの人気者という設定らしいが

…ストーカーって。





「実際と真逆じゃねえか」





モデル業の就く前から
ストーカー被害に遭ったことがあり、
警察にも何度かお世話になった現実。

事務所には
脱いでもキスしてもジャングル行っても平気
だと伝えたが、
…好青年役ではなく
まさかこんなクズ野郎を勧められるとは。





「でもまあ良い。
吉と出るか凶と出るか…、

面白そうじゃん」





役柄的には悪役とも受け取れる。

同じプロダクションに
所属している経験豊富な人たちがいる中、

初めてのオーディションを受けるという緊張感。



稽古場でも
お互い演技を見せ合ったりしていたから
それほど固くなることもなく、

現実に遭遇したことのある
ヤバめのストーカーって奴を
お偉いさんの前で表現したのだった。