第19章 戻りたい
すー…と息を吐いて深呼吸。
学校の記念撮影や証明写真とか
まったく緊張なんてしなかったのに
今日は自分の貧弱さに驚かされることばかり。
まるで大会に出場しているみたいだ。
(大丈夫…。俺にはみて欲しい奴がいる)
それは明確に、根本的に。
すー…と吐き出した息を止め、
新しい空気を吸い込んで
アウェイ感をぶち壊すように大声を張り上げる。
「よろしくお願いしますッ!!!」
腹から突きあげるような大声をあげたから
周りの大人達は
ビックリとした表情を留める。
驚いて目を大きく開けて
固まって、
けれどそれは次第に解されていって…。
「おう!よろしくなっ」
「威勢がいいね~!牛垣くんよろしくっ」
「イイ声してるね~!
クールな子かと思ったらちょっと意外」
「部活動紹介のとき長ランに惹かれて
応援団に入ったんです。
そこで発声練習とかあって…」
「へえ~!応援団か!
効果テキメン!僕イケメン!はいオッケー」
大きな声を張り上げたことで
余計な力がスーッと抜けていく。
床も後ろも白いところに足を踏み入れ
視線をあげると、
カメラマンやスタッフの人たちが
一人佇む俺のことを見ていた。
(あぁ…そうか。この感覚か…)
背中のあたりがゾワゾワする。
武者震いのように全身が震えあがって
だんだん楽しくなってくる。
顔のほころびを抑え、
向き合ったカメラにパシャっと
1枚ずつ、
シャッターが切られていった。