第19章 戻りたい
週末、未成年なので
母親に同席してもらって契約書にサイン。
Q-BOYSは
モデル事務所との契約だけかと思ったが
連絡を取ったときに
プロダクション契約も同時に行うということ。
毎年数万人の応募があり、
最近でも人気俳優として輩出している雑誌。
なので芸能界を目指す若者から
高い支持を得ているようだ。
「じゃあこのあとすぐ
宣材のための写真撮ろっか」
「初日から…。
何も用意してないんですけど大丈夫ですか?」
「うん。ついてきて~」
宣材写真やらプロフィール写真やら
書きものだけだと思っていたが
当日に写真を撮るとは思わず少々たじろぐ。
「ここから好きな服選んでね。
色々試着していいから」
「えっ。自分で選ぶんですか?」
「あはは。もしかして
ファッション興味ないから困ってる~?」
「ええ…。自分の似合う服とか
分からなくて…」
今日の服だって
私服が無さすぎて兄貴から借りたものだ。
上下一緒になっているものの
手にとっては悩む。
「だったら一つアドバイス。
雑誌モデルは色んな服着てるでしょ?
そして似合ってる。
俳優も
正統派から悪役にだって成って魅せる。
そう考えると
服も演技も似ていると思わない?」
服に着せられるのではなく
自分のものとして魅せる価値を見出す。
モデルの服と同じものを買って
自分には似合わなかったという人は
それに飲み込まれて
自分だけが浮いてしまっただけ。
「なるほど。ご教授有難うございます」
着たい服を選ぶ。
魅せたい自分を選ぶ。
目についた服を手にとり、袖を通した。