第19章 戻りたい
ユウの家に向かう途中、
夕飯いらないと母親にメールをする。
携帯を出したついでに…。
「なあユウ。写真撮ってもいい?」
「え?…」
「初めて一緒に遊んだ記念にさ。
いいだろ?」
カメラ設定をセルフィーに切り替え、
ユウの肩に腕を回す。
「はいチーズ!」
シャッター音が切られ、
記録された画像には
照れくさそうにピースサインをする
ユウとのツーショット写真。
「サンキュ。いま送るな」
「あ、うんっ。ありがとっ」
ユウの家は5階建ての新築マンション。
2階まで階段をあがり、
生活感のある
部屋の中を観察していた。
(線香の匂いも仏壇もないし、
母親は死別じゃなく離婚だろうか…)
ユウの陰が完全に晴れたわけじゃない。
離婚が原因で
あんな暗い影を落としたとも思えず
適当なところにカバンを置いた。