第19章 戻りたい
他にも違うスカウトマンに
「久しぶり~」と気さくに声を掛けられ、
ユウとの時間を奪われたような気分になる。
「す…すごいね…。
1日に何人も…」
「悪いな。俺は全く興味ないんだが」
「ご両親に反対されてるの?」
「反対はされてない。
むしろ母親が勝手に写真送ったくらいだ。
ばっくれて暫く口聞いてやんなかったけどな」
「お母さんは乗る気なんだ…。
アキはどうして芸能界に興味ないの?
こんなに周りから
素質があるって言われてるのに」
「それは…」
俺にとって芸能界のイメージ。
それは、
華やかな場所じゃなく
闇だと思っている。
「だって面倒臭いだろ。
自分を売らなきゃならない商売なんだ。
ただでさえ注目浴びてんのに
もっと街が歩きにくくなる。
それに自分の時間なくなって
恋愛も好き勝手できなくなるし、
そもそも束縛されんのが嫌いなんだ。
高校からちゃんと女作ろうと思ってたのに…」
「え?いま、付き合ってる子いないの…?」
「誰かが噂してたか?
それとも自分で言い触らしてたか。
言い出したらキリがねえ。
俺はまだ誰にも手ェ出しちゃいない」
ただの同級生だと思っていた女子が
俺と何かしただけで
好意があるとかなんとか
言い触らしてたことがあった。
そしたら他の女子がまた言い出して…。
思い出しただけでも反吐が出る。
そんな女、
こっちは1ミリも興味ねえのに。
「ユウはいるのか?そーいう奴」