第19章 戻りたい
負けず嫌いなところが顔に出てしまったのか。
スカウトマン小野寺と目が合うと、
にこっと笑われる。
「名刺まだ持ってる?
一応渡しておくね。
あとこれ。
ここまで歩いてきて喉渇いたでしょ。
もし気が向いたらいつでも連絡してきてね~」
そう言って
ペットボトルのお茶を手渡される。
撮影現場から離れてユウと二人で歩き出し、
目的のショップに向かう最中。
「ごめんね、俺のセイで。
あんまり気乗りしないコトだったのに…」
「いやいいよ。
俺も間近で見たことなかったし
勉強になった」
雑誌の名前くらいは知っている。
10代~20代前半をターゲットにした
若者男性向けファッション雑誌。
そこの専属モデルまで知らないが
どんな風に撮影するのか、
どんな役回りをしているのか、
モデルだけでなく
周りの会話や動きを観察することができた。
「でもすごいね!
初めてじゃないんでしょ?
親しそうだったし…
スカウトマンに声掛けられたの」
「親しくなんてないよ。
他にも何社か声掛けられたけど…」
また噂をすればなんちゃら。
見たことある別のスカウトマンが
声を掛けてきたのだった。