第19章 戻りたい
撮影が終わったところで
スカウトマン小野寺は津梅に話しかけており、
こちらに足を向けてきた。
「初めまして。
専属モデルの津梅剣です。
いつも応援してくれてありがとね」
「は、はい…っ…!
いつも、応援させていただいてますっ!」
握手で容量がいっぱいになったのか
サインを頼むことを忘れ、
スカウトマン小野寺に言われて
ユウは慌ててノートとペンを
鞄の中から出していた。
「君はモデル志望?
身長高いね。いま何センチあるの?」
「178です」
「スタイル良いし、顔も良いし、
若いのに風格あるよね。
高校1年生だから15、6歳でしょ?
君ゼッタイ芸能界向けだと思うんだけど。
その顔使わないと勿体ないよ?
俺も小遣い稼ぎにどう?って
小野寺さんから街で声掛けられてさ」
スカウトマン小野寺は
津梅にも余計な事を言ったのか、
勧誘に煽り立てる口振りだ。
ユウはユウで
俺以外の男に夢中になってるし。
くそ。
…仕事奪ってやるぞ。
俺の方が格好いいって、
もっと出来るって。