第19章 戻りたい
この時から、
ユウの表情にある陰の部分が気になっていた。
本人は誤魔化しているつもりだが
俺は無理に笑ってる表情を見抜いてしまった。
聞きたいけど聞けない。
踏み込んでいいのかと悩んだ末、
親密度をアップさせることに決めた矢先。
「う~…」
「ん?どうした?腹イタか?」
「ううん。英語が…」
今さっき英語基礎が終わり、
机に伏せてしまったユウ。
まだ序盤。
3回目の授業で大丈夫か、これ。
「めっちゃ読み仮名付けてるな。
読むのも話すのも聞くのも書くのも苦手?」
「うーん…。たぶん全部死んでる。
今まで単語暗記で乗り切ってたんだけど…
進学した高校間違ったかも」
「ただの暗記じゃツライだけだろ。
音楽とか好きか?
ロックとか、J-POPとか…聞く?」
「うん。
英語で何言ってるか分からないけど
リズム感があるロックバンドとか、
けっこう好き」
「そっか。なら耳は肥えてるんだな」
「ええっ!?
そんなっ、肥えってるってほどじゃないよ!?
たまに聞くくらいで…、えっと」
「空耳くらいが丁度良いんだ。
俺が楽しい授業にしてやる。
洋画とかも好き?」
「う、うんっ」
ユウの好きなもの、
興味があるものを聞き出す。
質問したら必ず答えてくれる。
だからユウのことが知ることができる。
「学校終わったら二人で遊びに行かないか?」
もっとユウのことが知りたくて、
俺から放課後の約束を取り付けた。