第19章 戻りたい
タケは「小中の頃のあだ名は?」と
聞き出していた。
「……、」
(…ん?)
すると突然渋い顔をした槍木。
その表情はほんの一瞬だったが、
へらっと作った笑みを浮かべたのが分かった。
「下の名前が祐次郎だから
ユウとか、ユウくん
って呼ばれてたことが多かったかな」
「うんっ、なんか分かるかも。
じゃあユウに決定!
祐次郎ってことは、次男坊?」
「ううん。
一人っ子なんだけど…みんなは?」
「俺は上に姉ちゃん、兄ちゃんいる!」
「俺は妹!けど全然可愛くない!!」
「惜しい可愛さだよな。
大ちゃんと違って性格キツイし」
「惜しい可愛さって何だよっ」
「俺は5つ上の兄貴が一人」
「へえ~!みんな兄弟いるんだ。
羨ましいなぁ…」
どうやら一瞬の表情の変化に
気付いたのは俺だけだったようだ。
触れてほしくないように
ユウは話題を変え、
兄弟エピソードについて聞いていたのだった。