第19章 戻りたい
弱弱しい声。
同級生なのに敬語まじり。
ただ挨拶しただけなのに
ビクッとして、
俺と目が合った瞬間…ジッと見てきた。
「くく、緊張してんな。
こっちまで移りそう。
もしかして高校デビューで髪染め過ぎた?」
俺は砕けた口調で反応を伺う。
手ごたえは悪くない。
こちら側が打ち解けやすい雰囲気を出せば、
きっと応えてくれると思ったからだ。
「えっ、あ…うん。実はそうなんだ。
よく分かったね…」
「だと思った。
でもその方が良かったかも。
似合ってるぜ」
「え?…」
俺は顔が良いから見られることに慣れている。
だから異性だけじゃなく、
同性にも
興味を持たれやすいのは知っていた。
「髪、明るい方が似合ってる」
「っ…」
何となくだった。
ふわっと柔らかそうな髪を触りたいと思って、
横髪に手を伸ばす。
(あ…。
俺、こいつの髪質好きかも。
ってか、どんどん赤くなってる。
…かわいい)
手に馴染むような綺麗な髪の毛。
もっと触っていたかったが
バッと後ろ身体を引かれてしまい、
赤くなった血流を下ろしていく。
「な、なに…っ…か、かみ…」
「綺麗だなーって思って。
手入れしてんの?」