第19章 戻りたい
机は離れており、
男女縦一列ずつ交互になっている席順。
阿部は真面目そうな奴だったが
挨拶すると
にこっと明るめの声で応えてくれる。
順応性が高い真面目くんだ。
(槍木だっけか。
髪の毛染めてんなぁ…、
校則自由だから問題ないが。
…ちょっと人見知りか?)
オレンジブラウンに染めた髪色。
髪色は明るいが
それに反して顔に陰がある。
俺の気配に気付いているっぽいが、
見ようとはしない。
絶対にこいつは人見知りだ。
「おはよう。
前の席に座る牛垣武明。よろしく」
「お、おはよう。
槍木です、よ…よろしくお願いします」
席に座る前に一声かけると、
ビクッと肩を振るわせ
伏せていた視線をゆっくりと持ち上げる。
廊下側の席だけど
目に光が入って、
垂れた目元から瞳を覗かせた。