第16章 清算
あともう一つの清算。
法廷で長瀬と対面した。
長瀬は反省の色を示すかのように
頭を坊主に刈り上げて
上下白い服をまとっていた。
弁護士と密にやり取りしたような
反省文を口にして、
奴の背中や横顔を見ていたが…
反省という色が不思議と俺には見えなかった。
審理を終え、
判決言い渡し期日。
「それでは開廷します。
被告人は前に出てきてください。
被告人 長瀬由真に対する
男性間性的暴行事件について、
次の通り判決を言い渡します。
主文…
被告人を懲役5年、執行猶予10年、
執行猶予中は保護観察とする。
この判決に不服があるときは
14日以内に控訴することができます。
それではこれで、閉廷します」
長瀬と目が合ったのは退延直後の1回のみ。
一瞬だった。
ユウも湊にも聞いて欲しくなくて、
赤司は見物がてら付添人と横に座っていた。
長瀬の瞳の奥からただならぬ気配を感じ、
横に座っていた赤司に助けを求めそうになった。
情けないことに身が固まり、
薬漬けの曖昧な記憶が呼び起こされ、
悪寒が込み上げた。