第16章 清算
俺の優しさで
千恵美の恋する気持ちを引き上げてしまった。
俺を独占したいという気持ち。
俺は子供が好きなのは本当のことだし、
千恵美は妊娠という手口を使って…
気を引き留めたということか。
他人が聞いたら、
あくどい女…と罵るだろうが…
「俺は両親に離婚したことを話したが
理由まで話してはいない。
事実を知ったら、
悪口を叩くと思ったからな。
あの優しい両親に話して、
なにを言われたのかまでは聞かないが
これ以上、
俺はおまえを責めるつもりはない。
おまえにとって
一番の被害者が俺だと思うなら
…ゆっくりでいい。
自分を許せ」
「でも…っ…、そんなの…」
「難しいかもしれないが
自分を責め続けて、佑都を育ててやるな。
これは、佑都のために言ってる。
夢から醒めたとして
俺の子じゃないと分かっても、
佑都は千恵美の子だろ?
きちんと最後まで育ててやれ。
追い出したり、離婚したり、
もう二度と会わない、
俺の子じゃないと分かっていても、
育ての父親だって愛情は俺にもある。
その辺で野垂れ死んでもらっちゃ困るから
金をポストに入れたんだ。
俺はおまえを許す。
だから愛情持って育てて、
人生楽しんで生きろ」
きっと佑都は子どもながら薄々勘づき、
気丈を振る舞う千恵美をみて
あんなことやこんなことを言ってるんだと思う。
涙を流さず
表面上は笑っていても
敏感な子どもには勘づくこともあるだろうから。