第16章 清算
佑都の出産には立ち会わず、
生まれてから連絡をもらった。
しっかりと重みはあるけど
力加減で壊れてしまいそうで
じっと見つめてきた黒目が大きくて
ぎゅっと握ってきた手が小さくて
俺が笑ったり
話しかけたら
声を出して喜んで笑ってくれる姿が嬉しかった。
「佑都に…逢いたいの…?」
「いや…佑都にはもう会わない」
佑都に会って、
本当のことを伝えるのがこわい。
佑都を目の前にして
「おまえの父親じゃないんだ」って
本当のことを伝えるのが
考えるだけで辛かった。
あの歳だから言葉を理解できても
意味までは分からないはずだ。
「佑都には、
ほかに父親がいることを伝えたのか?」
「ううん…。
佑都には…それは伝えないつもりよ。
パパとケンカして…
リコンしちゃったって…今はそれだけ。
今日も、お散歩中に…
パパと、早く仲直りできたらいいねって、
あの子はそういうの」
「仲直りか…」
気丈を振る舞っていた千恵美は
涙をこらえて、
声を震わせながら口にする。
そして、千恵美は続けるように…
「私が悪いのって言ったら
パパは優しいから
ちゃんと話したら許してくれるよって…
いい子にしてたら
パパがいい子いい子してくれるよって…
貴方がいつも
佑都にしてくれてたこと、
思い出しちゃって…。
貴方は…
私のことを最後まで信じてくれたのに
…裏切ってしまって、
本当にごめんなさい」