第16章 清算
着信をみると、千恵美と表示されている。
時間はそれほど経っていない。
いったん一呼吸を置いてから電話に出た。
「…俺だ」
『…どう、したの…?
急に電話なんてしてきて…』
「そっちに行ってもいいか?
おまえと会って、きちんと話がしたい」
『……、』
受話器から聞こえる音が沈黙をする。
別れたあとに会いたいと、
話しをしたいと持ち出すのは
やはり、考えなしの行動だったか。
しばらくすると…。
「分かったわ。
貴方のことだから今日すぐなんでしょ?
佑都のこともあるから遠くへは行けないわ…」
「俺がそっちに行くから安心しろ。
あそこでいいか?
前に…
挨拶しに行く前に寄ったところ」
「…ええ」
俺の家から千恵美の実家まで車で2時間弱。
指定した場所は、
千恵美の実家近くにある展望台。
俺は電話を切った後、
千恵美の実家へ結婚挨拶するときに立ち寄った
千恵美の故郷が一望できる
展望台へと車を走らせたのであった。