第16章 清算
電話の呼び出し音が数回鳴り、
向こうから聞こえた声は…
『はい?どちら様でしょ?』
「…突然お電話差し上げて
申し訳ありません。
武明です。
千恵美は…いま、近くにいますか?」
『あ……ううん。
いま佑都とお散歩に出掛けているわ。
10分くらい戻らないと思うのだけれど…』
電話に出たのは千恵美の母だった。
俺の名前を聞いた瞬間、
動揺して明らかに声が震えていた。
「あの…、」
『うちの娘が御免さないね…っ…、
非があるのは全部うちの娘よ。
武明くんが怒るのも無理ないわ。
あの子が全部本当のことを話してくれたと
信じたいのだけれど…。
佑都くんのこと、調べたって…』
「……もっと早くに
ご連絡するべきだったんですが…。
きちんと話を聞くべきだったのに、
話しをまともに聞かないまま
家から追い出してしまって、
急なご迷惑をお掛けしました」
『いいのよ。武明くんは何も悪くないわ。
千恵美もね、
貴方のこと本当に大好きだったから…
……困った娘よね』
ごめんなさい、と何度も謝る母親。
俺は義父母を責めて、
謝罪して欲しいわけではないのに
こころよい両親と分かってるだけあって
胸が痛んだ。