第16章 清算
そして、湊は送別会なしに退職。
なんだか清々しい顔だった。
その表情をみて
これで良かったんだと
それが正しい選択だったと思えることができた。
両親には離婚したことを電話で報告。
実家には帰りたくなかった。
離婚の理由を聞かれたが言わなかった。
騙されはしたが嫁を悪くいうのは
自分以外に許せなかったし、
俺も疑っていたのに
確認しなかったという落ち度があったからだ。
あとは、
本当の息子のように良くしてもらった
千恵美の両親。
義父母への事後報告をどうしようかと悩む。
かれこれ数週間が過ぎた。
今頃、
千恵美と佑都はどうしているのだろう。
俺の金を受け取らず生計はどうしているのか、
佑都は新しい幼稚園に馴染めているか、
俺がいなくなって…、…。
「電話…してみるか」
嫁の携帯番号じゃない。
義父母の固定電話番号を探し、
時計を確認してから電話をかけた。