第16章 清算
湊の上目づかいにドキッとしていると。
「両想いだって分かったら、
家にいるときみたいに
ヘンなこと考えちゃうから…」
「っ」
心臓に巨大な槍が突き刺さる。
頬染めてそんな言われ方をすると
まるで誘われてるみたいに
俺自身が興奮してしまう。
「もしバレたら
牛垣主任にまで迷惑をかけてしまう。
俺はこれからもずっと
牛垣主任の一番傍にいたいから、
会社を辞めたいんです…っ…」
湊はずっと俺と一緒にいたいから
近すぎる距離を離したかった。
冷静になった俺は、
いくつか思い当たる節があった。
湊とずっと一緒に同じ職場に居たいが、
それを翻すだけの材料がない…。
「……今回は俺の負けだ。
おまえの意志が固いことは分かった。
俺も…湊をみて、
発情してる部分はあったから…な」
職場キスの件もあって
いつ誰が見ているのか分からない。
言動だってそうだ。
誰がいつ聞いているのかも分からない。
頭の中では分かっているが
はじめて恋をして
恋は盲目ってのを痛感してしまったから。