第16章 清算
仕事中、課長に呼び出され
唐突な出来事に言葉を失ってしまう。
「君たちを心配させるからって
しばらく黙ってほしいと
口止めされてたんだよね。
角くん、今月いっぱいで退職するから。
すぐ代わりの者を異動させる手はずだから
仕事には支障ないよね」
「…っえ、…」
湊が退社だと?
しかも今月いっぱいでって。
「ですが、角は辞める必要はないと…」
「我々が解雇を要求したんじゃない。
私もそれでいいの?って聞いたんだよ。
職場のみんなも彼のこと、
受け入れてるみたいだからね。
でも彼は言うんだ。
自分一人の足で立ちたい。
もっと自分に合った仕事をしたいって」
「……、」
な…んだよ、それ。
聞いてない。
勝手に一人で決めやがった。
俺に相談もしないで。
(いつでも言う機会があったろ…っ)
湊が会社からいなくなる。
じゃあ俺の前からも?
初めて惚れて、恋人同士になれたのに…っ…。
「…牛垣くん。
彼をあんまり責めるんじゃないよ。
彼も人間。
意志をしっかり持っているんだから」
「……分かってます。
失礼します」
課長に呼び出された部屋を後にし、
自分の席に着席する際、
湊に視線を投げた。