第15章 帰る家
会社に到着すると
姿勢を正した湊が先に席をついていて
机に向かっていた。
「大丈夫そうか?」
俺は湊の肩に手を置いて、
湊にしか届かない小さな声で
表情を変化をみる。
「おはようございます。
牛垣主任、
この度はご迷惑をお掛けしました!
今後ともご指導のほど
何卒よろしくお願いいたします…っ」
湊は会社の顔になっており、
席を立ちあがってビシッとお辞儀をする。
どうやら俺の気が緩んでいたのかもしれない。
湊の他人行儀の振る舞いに
思わず心臓がドキッと跳ねてしまった。
「仕事復帰したばかりで分からないことは
俺なり先輩なりに遠慮なく聞けよ。
2週間近く休んで
丸っきり忘れられても問題だが」
「牛垣主任、ひどいですわっ。
湊くんは有能だって
褒めてらっしゃってたのに!」
「戻ってきて嬉しいくせに~。
あっ、もしかして照れ隠しですかね?」
「おまえらな…」
女子社員がキャッキャッ騒いでいる。
職場が明るいのは良いことだ。
余計なおしゃべりをし過ぎるのは
見過ごせないが。
…まあでも、
今日くらいは少し多めに見てやるか。