第15章 帰る家
「アキ。ネクタイ結び方忘れたの?」
「え?あぁ…。
やってくんね?」
「甘えんなよー。もう~」
ユウは呆れた声を出しながらも俺の前に立ち、
ネクタイを結んでくれる。
顔はユウの方が少し上。
優しそうな雰囲気を持つ垂れ目で
くっきりとした二重。
鼻立ちもスッキリしている。
顎ヒゲはあるけど
毎日欠かさないスキンケアで肌は色つやがあり、
いつも微笑んだように口の両端があがっている
可愛らしい口元。
「あんま顔見られると照れんだけど…。
はいっ、できた」
「そんなの今更だろ。さんきゅ」
なんとなくだった。
目の前にあった唇に
ちゅっ…と音を鳴らしてキスをする。
顔を離すと赤面するというより
完全に、
フリーズして瞬きもしないユウの表情。
「じゃあ俺、ヘアセットしてくるわ」
湊のは特別だが、
学生時代は催し物やその場のノリで
男同士でも唇と唇をくっ付けることがあった。
なので、ユウとはこれが初めてじゃない。
間接キスはしょっちゅうやってるし。
ユウの面白い表情も見れたことで
俺は洗面所を借りて
社会人らしく髪をビシッと決めるのであった。