第15章 帰る家
ユウから合鍵を借りており、
まだ出勤していないだろうが
人を使うのも悪いと思って自分で鍵を開ける。
「あ。アキ、おかえり~」
音に気付いたユウは
廊下からひょっこり顔を出し、
俺はすかさず手のひらを合わせて
ごめんなさいポーズをした。
「ただいま。
ユウ、一昨日は悪かった!
病院行って湊とドッジして時間忘れてた。
すまんっ」
「ううん。全然いいよ。
朝ごはんもう食べてきた?」
「おう、食べてきた。
夕飯は俺作るから。
食べたいのリクエストない?」
「そうだな~。
あっ!じゃあパエリア食べたいかな。
それより良かったね。
湊くん、仕事戻れて」
「ああ。異動命令が出されると思ったが
部下のおかげもあってな。
慣れてきたばかりだから良かったよ」
上司や人事部に何度も問い合わせて、
何とか食い止めることができた。
今日は湊にとって正念場だ。
少なからず色目でみられ
苦痛を強いられるだろう。
悪口や陰口、
肉体的いじめはないにしろ
精神的にえぐられるのは間違いない。
「……、」
スーツに着替えて、
ネクタイを首に掛けたところで手が止まる。
ユウには湊が同性愛者だと伝えている。
だから一昨日、
俺と湊は恋人同士になったことも
伝えた方がいいのだろうかと。