第12章 知らせ
俺に触るなと言ったのに、
…うぜえ奴。
「お願いだから出て行かないで…っ…!
まだ小さな佑都もいるのよ!?
あなたのことすごく慕って」
自分が孕ませた子供だと思ったから、
責任を果たそうと思った。
しかしこいつは
一生嘘を吐き続けるつもりだった。
「だからなんだよ。
おまえが好きで産んだ子だろ?
俺は堕ろす全額払うって言ったとき
拒んだよな?
そうじゃなかったら
自分で育てるって言ったよな?
自分の言ったことも責任持てねえのかよ。
俺は 責任 で結婚したんだ。
おまえも子供も好きで結婚したんじゃねえよ。
勘違いで都合よく解釈すんな」
「いやぁっ!待って。お願いだから…っ…」
千恵美のことは好きじゃない。
複数関係を持っている女の中の一人、
それ以外の何者でもない。
これまで6年間、
家族として過ごしてきた思い出。
全部それは作り話で
俺は何一つとして無関係だった。
「…頼むから離してくれ…っ。
デカい声出したら佑都が、
起きるだろ…ッ…」
「…っ」
家族関係で
トラウマを持っている奴を知っている。
だから大声をあげたり、
大きな音を立てたくない。
子どもは、
フラッシュバックを頭に焼き付ける。
「離婚届は明日の夜、
郵便ポストに入れておく。
佑都には自分でなんとか言い聞かせろ。
おまえとなんてやり直す価値もない」
荷物をまとめて車に乗り込む。
バタンッ!と感情任せに閉めてやりたかったが
物や人に八つ当たりするのは誤りなんだと
とてもよく知っているから。
……くそっ…