第12章 知らせ
部屋に戻って、
スーツケースのなかに無言で衣類を敷き詰める。
「武明!これには、事情が…っ…」
「事情じゃなく戯言だろ。
今さらなにを言ったって
嘘にしか聞こえない」
「ねえ武明…っ…、
お願いだから、
聞いてよ…っ…ねえっ」
千恵美は俺の腕を掴んで邪魔をする。
俺は何一つ間違っていない。
責められることなんて何一つない。
「──俺に触んな」
ギロッと睨むと千恵美は怯えた顔をする。
泣きそうな顔をして腹が立つ。
感情を爆発させるのもバカバカしい。
喧嘩する価値もない。
煮え繰り返りそうな感情を抑え、
あくまで平静を装って口走る。
「ッ…なら俺から言わせてもらうが、
病院行ったときも車ん中でも喫茶店でも
俺は何度もおまえに確認したよな?
ほかに関係を持った男はいない、
間違いなくあなたの子ですって、
自分で認知したよな?
それなのに俺のDNAは否定された。
0%だぞ。
これ以上の証拠は他にないよな?
おまえの嘘つきの口から聞くか?
嘘しか言えねえんだろ?
ほかの男と認知した子供を俺に育てさせて
面白かったかよ。
家族ごっこはもう終わりだ」
荷物をまとめて立ち上がると、
奴は諦めが悪く
頬を濡らしてしがみ付いてきた。