第12章 知らせ
ただいまーと玄関扉をあげると。
パパ~!と腕を大きく広げて、
パジャマ姿の佑都がパタパタと走ってきた。
「佑都、まだ寝てなかったのか。
もう寝なきゃならない時間だぞ」
「まだ九時じゃないっ」
佑都は靴を履いたまま俺の足腰に抱きつき、
片っぽの手で俺のつけていた腕時計を指さす。
「佑都。三針時計が読めるのか?」
「12に来たらね、
また12が来るってママが教えてくれたの!
パパはいっつもね、
ここにある時に帰ってくるの」
「よく見てるな~、佑都。
頭撫でてやりたいが
まず先に手を洗って来てもいいか?」
「うんっ」
「じゃあ腕を離してくれ」
「分かったっ」
小学1年生程度に時計が読めるとは
えらいことだ。
家のなかで俺の帰りを待ち、
回る針を見ながら思っていてくれたことに
なんだか和やかな気持ちになる。
手を洗って佑都の頭を撫でてやり、
リビングに入ると千恵美が
温かい食事を彩りよく並べてくれていた。