第2章 距離感
「……それは、」
「ん?」
しっかり俺を見据えていた目。
初めてしっかり視線が合った気がして、
胸の四隅が撫でられるような感覚。
「俺のこと、知ってて言ってるんですか?」
長い前髪から覗かせる
シャープな目尻。
「知るって、何をだ?」
四隅を撫でられた範囲が広がっていく。
ゾワゾワと、
不気味な居心地が襲ってくる。
「っ…、知るって、
主任は俺のこと知ってて
おちょくって来たんじゃないんですか!?
俺を、この会社から追い出したいから…っ」
「!?おい待て。
何のことだかさっぱり」
「離してください!!」
掴んだ腕を離したら間違いなく逃げる。
この話は流れて、
訳も分からないまま時間が進む気がして、
掴んだ指先にグッと力を込めた。