第2章 距離感
事が分かったのが、
大人しく寝癖を直されている角。
(柔らかいな…)
手に馴染むような髪質。
人の寝癖を直す趣味はないが、
今こうしていることが満足に思えている。
「あ…あの…っ」
「俺の親友が美容師なんだ。
そいつの髪も綺麗なんだが、
……おまえの髪は、
触り心地がいいな」
いつまでも触っていたい触り心地。
寝癖が直ったのを確認し、
最後にもう一回…サラッと撫でる。
「社会人なんだから気を付けておけ。
いつ誰に見られているか…、
しっかり認識しておくんだな」
クシをしまいながら話したが
一向に返事はない。
視線の先を戻すと。