第11章 男の身体 *
離した唇を指先で撫で、
答えを待つように瞳を見つめる。
「媚薬…盛られたんですよね。
…いいですよ。
俺の身体…好きに使ってください」
「長瀬のことも聞かないし、
答えたくないってか」
「俺が男に抱かれて悦ぶのは、
本当のことですから」
「っ…」
セクシャルマイノリティだからって
妥協が許されるのか。
ほんの少し優しくされて、
抱かれて、
好きになって、
本当にそれでいいのか。
俺には恋という変哲なものは分からない。
好きとか愛をぶつけられても、
その感情に共感することができなかった。
「じゃあ抱かれろ」
「はい」
なのになんで苦しいんだ。
女を抱いたって
一度もこんなに苦しくなんてなかった。
むしろ自由に排泄させてくれるいい相手なのに。
「んぁ…っ」
裸の身体を貪り合いたくて、
邪魔な上着を脱がせた。
白い綺麗な首筋に噛みついて…
「男の抱き方なんて知らねぇからな」
「存じてます」
湊は受け止めてくれる。
俺は吸い付くような白い肌に赤い痕を残し、
今度は歯型を残すように歯を立てた。