第11章 男の身体 *
ぴちゃ…と水音が滴り、
口から漏れた吐息が重なる。
「はぁ…っ…ん」
湊とのキスは気持ち良かった。
飲み込まれるように、
どんどん絡みついて
濃厚なキスに変化していく。
「はぁ、ふ……っは、んう…」
組み敷いている湊の抵抗の素振りはない。
俺が男だから悦んでいるのか。
俺だって女は選ぶ。
選んだ女と付き合っていた。
誰でも良いってわけじゃない。
「少しは抵抗しろ…」
「何も…聞くなって…、
仰ったじゃないですか…」
だからって普通、無抵抗に襲われるか。
「俺が…直属の上司だからか?」
「それはどうでしょう」
「俺が…男だからか?」
「それもどうでしょう」
「長瀬より…俺が、好きか?」
「……、」
湊にとっては初めての恋人。
かけがえのない存在だったはずだ。
職場でのキスがバレて、
二人の関係は引き裂かれた。
そして今回の事件。
俺は長瀬に薬を盛られたと口にした。
湊はどう思った?
言わなくても、なにか感づいたか?