第2章 距離感
「な…、んの、つも…り…」
真っ赤にした顔。
ひどく動揺している声。
「?…なにを言っている」
わなわなと小刻みに震えている。
言葉を選んでいるように、
少し厚ぼったい唇が開いたり閉じたり。
「っ、だ、だって…!!
きゅ、急に、そ、そんなこと、…っ」
興奮した慌ただしさ。
自分の言葉に照れているのか、
意味も解らず頬の赤らみが増している。
「なにを期待しているのか知らんが、
直してやる」
「な、なおす…!?」
「大人しくしてろ。
俺に任せておけ」
懐にしまっていたクシを取り出し、
付属の整髪料を使って、
寝癖のついた後ろ髪を梳かしていった。