第10章 取り調べ
「なるほど。
長瀬は自分のおかげで働けているんだと
牛垣さんは会社に飼われていると、
そう言ってきたんですね」
「こんな容姿ですから
…人には、それなりに好かれました。
結局は顔だけなんだと、
内面を評価されにくかったり…。
他人に努力している姿を見られたくない
プライドも、多少なりともあって…。
裏で媚を売っているという噂も
学生時代からずっと、耳に入ってました」
「長瀬の中傷を真に受けてしまった、
というわけですか?」
「負けず嫌いなのでそれくらいでは…。
それから、小瓶に入った薬を使われました。
頑なに飲むのを拒否ったら
吐き出しても、いいといわれたので
迷わず床に吐き出して…。
その時、注射も持っていると脅されたんですが、
…まさか…
本当を持っているとは思わなくて。
かなり焦りました」
強がっていたが、内心はかなり焦っていた。
裏で出回っている薬物を連想させたからだ。
使われたら、
もう元の生活に戻れないとさえ頭によぎった。