第10章 取り調べ
自分が殴られた箇所は何となく把握できる。
そこが軋むように痛いからだ。
「抵抗といっても…あれは一方的でした。
俺が、奴の顔面を殴ろうとしましたけど、
…届かなくて。
殴られ続けて…腕が上がらなくなって、
届いた腕に、
爪を立てたことくらいしか…」
「事実と一致しますね。
長瀬にはうっ血した爪痕くらいしかなく、
馬乗りになられて
一方的に牛垣さんは拳を振るわれた。
そしてその後、拘束されたと。
…長瀬はどのように触ってきましたか?
どのように何をされたのか、
何をどんな風に使われたのか、
そのとき何を言われたのか、
思い出せる範囲でお聞かせください」
思い出したくもない。
拘束されてからの拷問のような凌辱。
「唇を切ったところに触ってきて…、
撫でられそうになりました。
俺はキス、されるかと思って、
触れてきた指を噛み千切ってやろうとしましたが
逃げられて…。
もっと盛り上がるものを持ってくると
奴は5分もなかったですが…、
部屋の外に行きました」
今のうちに逃げようとしたが、
固く結ばれた
縄もガムテープも解くことができず。
戻ってきた長瀬は、
俺の努力を滑稽に踏み荒らして来たのだ。