第10章 取り調べ
長瀬は湊を利用していただけ。
それは奴の口振りを聞いて分かった。
けれど湊はまだ犯人が誰なのか知らない。
「…黙秘します」
男同士で付き合っていたという事実。
果たしてそれは有益な情報となり得るのか。
結果的に長瀬はペラペラと喋るだろうが、
湊は長瀬がはじめての恋人だと話していた。
とても嬉しそうに。
だから俺は、
はじめて関係を持った教師よりも
長瀬に対する湊の想いに
胸の四隅が締め付けられたのを忘れてはいない。
「続いてですが、
長瀬からどうやって迫られましたか?
部屋を見せられた後からになりますが」
「…あの部屋をみて…、
後頭部を思いきり、なにかで…殴られました。
意識は一瞬、どこか失った気がしましたが、
気を取り戻して…。
必死に、抵抗しました」
「長瀬の身体からも抵抗した血痕がありました。
かなり激しくやり合ったようですが」
「馬乗りで殴られたりして
正直、その時の記憶はほとんど…」
「どこを殴ったとかは覚えていますか?」
後頭部を殴られて、立っていられなくなった。
そのまま強い力で覆い被さってきて、
「抵抗しないでください」
「暴れないでください」
「大人しくしてください」
と、狂乱した笑い声をあげ…
何度も何度も何度も
首から上を避けて、
胴体を中心に痛めつけられた。