第2章 距離感
マイホームの準備を進めつつ、
仕事中に目が行く先は…。
(…寝癖、ついてる)
後ろについたうねり髪。
そこまで目立ちはしないが、
いつも真横から見ているから目が行ってしまう。
(あ。席を立った。
…トイレか?)
頭髪も社会人の身だしなみ。
清潔感があれば多少派手でも、
黙って様子を見ている。
俺は角の後ろをそれとなくついて行き、
やはり行き先はトイレだった。
「…あ、主任…。お疲れ様です」
「ああ。お疲れ」
仕切り板を挟んで小便を済ます。
化粧台の前で手を洗い、また横に並んだ。
「ちょっと待て」
「え?…なん、ですか…?」
呼び止めて、手を伸ばす。
後ろ髪にあった寝癖をそっと撫でる。
「気になってたんだ」
そういうと、
角はみるみる大きく目を見開いて、
赤くなった顔を逸らした。