第10章 取り調べ
ここは取調室。
まだ手足がジンジン痺れている。
まんべんなく清拭されたが、
全身ごと湯船に浸かりたいがその気力もない。
それに、
何よりこの熱した身体が…
「ハァ……ハァ…」
「担当の物部です。
ご協力感謝いたします。
早速ですが、
事件の状況を詳しくお聞かせください」
前に並べられた2つの長机。
その前には腕捲りをして
サスペンダーをかけた30歳前半の刑事。
もう一人は壁を向いてパソコンを開き、
フチなし眼鏡をかけた
少し若めの刑事が座っている。
事件発生からそう時間も経っていない。
しゃべることも吐き出す息も辛くて、
唇に指を引き寄せる。
「落ち着いてからで良いですよ」
身体が熱い。
うずくまりたい。
けれど家には帰りたくなくて、
長瀬のことを一刻も早く忘れたくて、
後日でも良い事情聴取を
いま済ませたいと、頷いてしまった。