第9章 濁音 *
長瀬の右手には小瓶。
左手にはラブホテルにある大人の玩具の数々。
「…湊にも、そんなことしたのか」
「いいえ。湊とは普通のSEXですよ。
縛ったり玩具を使ったりしない、
ごく普通のSEXです。
牛垣さんはどうでした?
男とSEXして悦ぶ湊とヤって、
気持ち良かったですか?」
「俺は女しか抱いたことがない」
「本当に?噂になってますよ。
その若さで主任になるのはおかしいって。
端麗なルックスをつかって、
枕営業してるんじゃないかって」
それは嫌でも耳に入ってくる。
俺は容姿が良いからと、
努力して実力でのし上がっても
何も知らない奴らは
俺のことを顔でしか評価しない。
「残念だな…。
これだけ俺を見ているというのに
そんな風に思われていたとは」
「言い方が悪かったですかね。
確かに表面化では枕営業はしていないですよね。
だけど、
俺はずっと陰ながら応援してたんです。
この会社に入れたのも俺のおかげです。
ここまでのし上がれたのも俺のおかげです。
貴方は初めから俺に飼われてたんです。
貴方の実力なんてこれっぽっちもないんです。
俺が全部裏で手回ししていたんです。
これで分かったでしょ?
牛垣さんには俺が必要なんだって」