第9章 濁音 *
手は背中側に固定され、
結び目が固くて微動だにできない。
抵抗しすぎたのが仇になった。
折り曲げた足には縄の代用品として、
何重にもガムテープが巻かれている。
縄よりガムテープの方が解けそうな気がしたが
焦りからか
思い通りになってくれない。
「チィッ」
このままでは奴の餌食になってしまう。
この部屋の扉を開けたら
目にしたのは壁一面に張られた俺の写真の数々。
高校や大学でのモデル時代の写真。
しかし、それ以外にも
盗撮された高校や大学での日常風景、
今働いている会社の写真まであり、
その量は尋常じゃない。
写真は大きいものから小さいもの。
壁紙のような大きさのもあった。
「くそッ」
ユウのように
コレクションしている部類とはまるで違う。
奴のは異常。
口の中は血の味がする。
焦りともに気味悪い汗が滲む。
このガムテープさえなんとか出来れば
奴を蹴り飛ばせる。
刻一刻と時間が迫り、
何も解決できぬまま閉ざした扉がまた開いた。