第8章 白濁
50階以上もあるタワーマンション。
階段表示がどんどん上がっていく。
「一人暮らしか?」
「ええ。あれから益々お見合いの話しを
出されるようになってしまって。
一生の相手くらい自分で決めたいんですけど」
「副部長はお優しい方だろう。
正直に言ったら
聞き入れてくれるんじゃないか?」
「そうなら良いんですけど…、あ!
なら今度、父を含めてお食事しませんか?
牛垣さんならきっと」
「お誘いは嬉しいが、
俺が入ったら益々
ややこしいことになるだろう」
長瀬は非常に懐いた様子を見せているが
湊を受け入れた部署の直属の上司。
副部長からすれば面白くはないはずだ。
エレベーターが到着。
廊下を進み、
ガチャッと扉を開ける。
「どうぞ。お上がりください」
玄関の顔となる入口には、
有名な美術品が置いてあった。