第8章 白濁
当時、複数の女と関係をもっていた。
結局誰にも恋することができなかった。
性処理だけに身体を繋いで
自分の足りない部分を満たそうと
意味もなくもがいていた。
人を好きになることはできる。
けれどそれは恋の味とは呼べない代物。
それがSEXという肉体に求めた結果だった。
俺は…、
誰にも恋できないのが苦しかったのだ。
「嫁の…腹のなかを見たとき、
小さな光を感じたんだ」
神々の悪戯か、天のおぼしめしか。
この腹の子が、
俺になにか気付かせてくれるのではと思った。
このままじゃ一生誰も愛せない。
だから疑うことをやめた。
だから責任と覚悟を決めた。
誰かを愛したい。
幸せになりたい。
満たされたい。
佑都が生まれてから、
愛情は少しずつ芽生えたかもしれない。
…でもなにかが違った。
渇いた胸が満たされなかったからだ。
時間ばかりが流れ、
6年の歳月が経って…再び疑念に駆られた。
もうすぐ検査結果が届く。
嫁は、俺以外の男と関係はないと言ったから
DNA鑑定を依頼したのだった。