第8章 白濁
長瀬に言われて改めて考えてみる。
最近はなかったが、
男に告白されたときの気持ち。
「意識はしないな。
ただ、異性でも同性でも
好意を持たれたという点は嬉しいとは思う。
両方とも過度なのは受け付けないが」
「湊だと、どうですか?」
「相手が誰であろうと、
湊だとしても変わらない。
湊は素直で可愛い部下だとは思うが、
それ以上でもそれ以外でもない」
「…普段、湊って呼んでるんですか?」
自分の眉がわずかに動くのを感じた。
部下やユウの前では湊と呼んでいるが、
それ以外は
ケジメをつけていたつもりだったのに。
長瀬の言い方に感化された。
やむを得ない。
「部下が湊というものだから移されたな。
こっちの方が馴染みが良くて」
「ですよね!角っていうより、
湊って名前の方が可愛いですよね!
…あっ、すみません」
「?」
何に謝られたのが分からず、
そっとしておく。
やはり角という苗字より、
湊という名前で響きが良いのは
同感のようだ。