第8章 白濁
佇まいからでも分かるように、
長瀬は俺よりもガタイの良い背格好。
体育系の爽やかなベリーショートで
真っすぐした瞳。
人懐っこい笑みを浮かべる好青年で、
湊とは真逆の明るさを放っていた。
「角のことは、知っているな?」
「ええ。俺もビックリしました…。
元気でやっていますか?」
「ああ。こっちに来た時しか分からないが、
元気にやっていたよ」
「そうですか。
それが聞けて良かったです…」
湊のことを思い出しているのか、
視線を伏せて憂いな表情を浮かべる長瀬。
今でも、湊を想っているのだろうか。
「長瀬は、副社長から何か聞かされてないか?
見当がつく相手がいるとかいないとか…」
「逆に父から聞かれましたよ。
でも、あれから一度も連絡を取ってないし、
本当に何も知らないんです。
…牛垣さんは俺たちのこと、
どこまで知っているんですか?」
「……すべて、教えてくれたよ」
そう易々と口にするべきことではない。
湊は生まれながらに
セクシュアルマイノリティに苦しんでいた。
誰にも言えなくて、
一人ぼっちで、
やっと寄り添える相手に見つけたのに、
再会した時、
罵倒を浴びせられ滑稽に扱われた。