第8章 白濁
人事課の顔馴染みに聞いたが、
角の異動は
まだ正式に動いていないということ。
一斉メールが発信された
パソコンを突き止めたが
その者の関わりがまったく身に覚えがなく、
犯人の正体はいまだ不明。
前の会社や長瀬名義での
同様のメールは届いていないそうだ。
つまりこの会社にいる内部の人間。
もしくは、
会社に立ち入ることができた
不特定多数の人間。
「湊くん。大丈夫かな…」
「主任。連絡取ってないんスか?
俺が送っても返信なくって」
「死んではないぞ」
「物騒なこと言わないでくださいよ!もう~っ」
部下の曇った色が日に日に濃くなっていく。
季節外れの転社。
一緒に仕事をしてきて早4か月。
「おまえ達は同性愛が事実だとして、
この先、
湊を受け入れられるのか?」
率直な疑問。
少なくとも嫌悪感より心配する表情。
俺は雰囲気で察するのではなく、
言葉にして部下たちの想いを確かめたかった。